上肢の後遺障害

交通事故オンライン後遺障害編

伊佐行政書士事務所
〒278-0051千葉県野田市七光台316-17
  1. 上肢の後遺障害
  2. 手指の後遺障害
  3. 鎖骨骨折
  4. 肩腱板損傷
  5. TFCC損傷

上肢の後遺障害

肩関節に直接外傷を受けたり、周辺部に外傷を受けたりした場合に、可動域制限や痛みなどの後遺症を残すことがあります。 肩関節は構造が複雑なため、損傷が見落とされるケースもあり、そのために低位の等級しか認定されていないケースが見られます。 関節の機能障害のほか、切断により指や腕を失ったり、骨折した部分が変形してくっついたりする障害があります。

機能障害や変形障害に該当しない場合であっても、それに伴う痛みなどの神経症状が残った場合は、第12級13号か第14級9号に 認定される場合があります。

【上肢の欠損障害】

両上肢をひじ関節以上で失ったもの 第1級3号
両上肢を手関節以上で失ったもの 第2級3号
1上肢をひじ関節以上で失ったもの 第4級4号
1上肢を手関節以上で失ったもの 第5級4号

「ひじ関節以上で失ったもの」とは、肩関節もしくはひじ関節や、肩関節とひじ関節の間で上肢を切断した場合をいいます。 「手関節以上で失ったもの」とは、手関節や、ひじ関節と手関節の間で切断した場合をいいます。

【上肢の機能障害】

両上肢の用を全廃したもの 第1級4号
1上肢の用の全廃したもの 第5級6号
1上肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの 第6級6号
1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの 第8級6号
1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの 第10級10号
1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの 第12級6号

上肢の用を全廃したものとは、3大関節(肩・肘・手関節)の全てが強直し、かつ、手指の全部の用を廃したものをいいます。

関節の用を廃したものとは、①関節が強直したもの(ただし肩関節にあっては肩甲上腕関節が癒合し骨性強直していることがX線写真により確認できるものを含む)、②完全弛緩性麻痺またはこれに近い状態となったもの(これに近い状態とは、可動域が健側の10%程度以下となったものをいう)、③人工関節を挿入置換し、その可動域が健側の1/2以下に制限されるものをいいます。

関節に著しい障害を残すものとは、①可動域が健側の1/2以下に制限されているもの、②人工関節を挿入置換したもののうち、可動域が1/2以下に制限されていないものをいいます。

単なる機能障害は、関節可動域が健側の3/4以下に制限されているものをいいます。

関節の機能障害の評価方法

関節の機能障害は、可動域の制限の程度に応じて評価します。上下肢など、両側に関節があるものについては、健康な側(健側)と障害のある側(患側) とを比較することとなりますが、両側とも障害が残ったり、脊柱などの障害で健側との比較ができない場合は、参考可動域角度との比較で評価を行います。

部位名 運動方向 参考可動域角度
屈曲(前方挙上) 180
伸展(後方挙上) 50
外転(側方挙上) 180
内転 0
外旋 60
内旋 80
ひじ 屈曲 145
伸展 5
前腕 回内 90
回外 90
屈曲(掌屈) 90
伸展(背屈) 70
橈屈 25
尺屈 55

【上肢の変形障害】

1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの 第7級9号
1上肢に偽関節を残すもの 第8級8号
長管骨に変形を残すもの 第12級8号

偽関節を残し、著しい運動障害を残すものとは、上腕骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残し、あるいは橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残し、常に硬性補装具を必要とするものをいいます。

偽関節を残すものとは、上腕骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全を残し、あるいは橈骨及び尺骨の両方の骨幹部等に癒合不全を残し、常には硬性補装具を必要としないものをいいます。橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部等に癒合不全を残し、時々硬性補装具を必要とするものもこれに該当します。

長管骨に変形を残すものとは、①上腕骨に変形を残す、あるいは橈骨及び尺骨の両方に変形を残し、外部から想見できる程度(15度以上屈曲して不正癒合したもの)以上のもの、②上腕骨、橈骨または尺骨の骨端部に癒合不全を残すもの、③橈骨または尺骨の骨幹部に癒合不全を残し、硬性補装具を必要としないもの、④上腕骨(骨端部を除く)の直径が2/3以下に、または橈骨もしくは尺骨(それぞれの骨端部を除く)の直径が1/2以下に減少したもの、⑤上腕骨が50度以上外旋または内旋変形癒合しているものをいいます。

【事例】 肩関節の機能障害で第12級6号に認定

バイク対自動車の事故で、バイクが転倒し肩を強打、鎖骨を骨折しました。後遺障害診断書をもって相談に見えましたが、記載内容をみると 非常に雑な内容で、これでは取れる等級も取れないことが明らかでした。被害者様もそれを心配してご相談にみえたのですが、 医師にどのように頼めばよいかわからないとのことで、ご依頼をいただきました。調べてみると肩の機能障害で12級になる可能性があるとわかりましたが、 それに必要な画像検査が行われていません。早速医師にお願いして検査を行い診断書にコメントをお願いしましたが「何を書けばいいかわからない」 とのことでした。そのためいくつか記載例をお示しして、必要な情報を追加していただき、等級の方も初回申請で12級となりました。

手指の後遺症

【手指の欠損障害】

両手の手指の全部を失ったもの 第3級5号
1手の5の手指又は親指を含み4の手指を失ったもの 第6級8号
1手の親指を含み3の手指を失ったもの又は親指以外の4の手指を失ったもの 第7級6号
1手の親指を含み2の手指を失ったもの又は親指以外の3の手指を失ったもの 第8級3号
1手の親指又は親指以外の2の手指を失ったもの 第9級12号
1手の人差し指、中指又は薬指を失ったもの 第11級8号
1手の小指を失ったもの 第12級9号
1手の親指の指骨の一部を失ったもの 第13級7号
1手の親指以外の手指の指骨の一部を失ったもの 第14級6号

手指を失ったものとは母指は指節間関節(IP)、その他の指は近位指節間関節(PIP)以上を失ったものとされており、 具体的には①手指を中手骨または基節骨で切断したもの、②近位指節間関節(母指にあっては指節間関節)において、基節骨と中節骨とを離断したものをいいます。

指骨の一部を失ったものとは、1指骨の一部を失っていることがX線写真等により確認できるものをいいます。

【手指の機能障害】

両手の手指の全部の用を廃したもの 第4級6号
1手の5の手指又は親指を含み4の手指の用を廃したもの 第7級7号
1手の親指を含み3の手指の用を廃したもの又は親指以外の4の手指の用を廃したもの 第8級4号
1手の親指を含み2の手指の用を廃したもの又は親指以外の3の手指の用を廃したもの 第9級13号
1手の親指又は親指以外の2の手指の用を廃したもの 第10級7号
1手の人差し指、中指又は薬指の用を廃したもの 第12級10号
1手の小指の用を廃したもの 第13級6号
1手の親指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなったもの 第14級7号

手指の用を廃したものとは、手指の末節骨の半分以上を失い、または中手指節関節(MP)若しくは近位指節間関節(PIP)(母指にあっては指節間関節(IP))に著しい運動障害を残すものとされており、具体的には①手指の末節骨の長さの1/2以上を失ったもの、②中手指節関節または近位指節間関節(母指にあたっては指節間関節)の可動域が健側の1/2以下に制限されるもの、③母指については、橈側外転または掌側外転のいずれかが健側の1/2以下に制限されているもの、④手指の末節の指腹部および側部の深部感覚および表在感覚が完全に脱失したものをいいます。

遠位指節間関節を屈伸することができないものとは、①遠位指節間関節が強直したもの、②屈伸筋の損傷等原因が明らかなものであって、自動で屈伸ができないものまたはこれに近い状態にあるものをいいます。

関節の機能障害の評価方法

関節の機能障害は、可動域の制限の程度に応じて評価します。上下肢など、両側に関節があるものについては、健康な側(健側)と障害のある側(患側) とを比較することとなりますが、両側とも障害が残ったり、脊柱などの障害で健側との比較ができない場合は、参考可動域角度との比較で評価を行います。

部位名 運動方向 参考可動域角度
母指 橈側外転 60
掌側外転 90
屈曲(MP) 60
伸展(MP) 10
屈曲(IP) 80
伸展(IP) 10
屈曲(MCP) 90
伸展(MCP) 45
屈曲(PIP) 100
伸展(PIP) 0
屈曲(DIP) 80
伸展(DIP) 0

鎖骨骨折

どういう傷害か

鎖骨には上肢や肩甲骨の運動・安定のほか、神経や血管束の保護、挙上による呼吸の補助などの役割があります。 鎖骨は上から見るとS字のカーブを描く形をしており、近位(胸側)、中央、遠位(肩側)に三分割すると中央部分が最も骨折しやすくなっています。 胸側の端を胸鎖関節といい、肩側の端を肩鎖関節といいます。

鎖骨に直接外力がかかり骨折することは少なく、外方よりの介達外力による骨折がほとんどですが、直達外力による骨折では腕神経叢損傷を伴う場合もあります。 遠位端骨折では烏口鎖骨靭帯損傷を伴うものは機能障害を残しやすいとされています。 偽関節となるケースも多いですが、無症候性であれば治療の必要はないとされます。症候性偽関節の場合は骨切や移植術が行われます。

治療方法

鎖骨の中央部付近が骨折した場合は、変形した状態で骨癒合しても運動障害が残る可能性は低いため保存的治療が選択され、 クラビクルバンド(鎖骨固定帯)による固定などで骨癒合を待ちます。 鎖骨の遠位端・近位端骨折や、転位の大きい場合、第3骨片のある場合は、骨癒合があまり期待できないため、手術が行われます。 手術侵襲が少ないキルシュナー鋼線で鎖骨を固定する方法が一般的ですが、プレートをネジ固定する場合もあります。

後遺障害等級

保存的治療をした場合は変形治癒することが多く、12級5号に認定されるケースが多いです。 変形の程度は裸体になった時に変形がわかる程度でなければならず、レントゲンなどで癒合部に肥厚がみられる程度では変形による後遺障害認定はされません。 骨癒合せず偽関節となった場合は骨盤骨から骨移植をする場合があります。この場合、以前は骨盤骨の変形と併合で11級に認定されていましたが、 現在の基準では骨採取程度では等級に該当しないこととされたため、12級5号のみの認定となっています。

認定事例

58歳会社員男性が自転車で交差点を通行していたところ、後方から自動車に追突され転倒し、左鎖骨を骨折しました。 クラビクルバンドによる固定で治療をしていましたが、上手く骨癒合せず骨移植を行ったため治療に1年半かかりました。 後遺障害診断書作成前に医師に医療照会を行ったところ機能障害と変形障害で併合11級となる可能性があったため、検査等を依頼し、 その結果を踏まえて後遺障害診断書を書いていただいたところ、初回の認定で併合11級に認定されました。

肩腱板損傷

どういう傷害か

腱板は、棘上筋腱、棘下筋腱、小円筋、肩甲下筋腱という四つの腱の塊です。肩甲帯から上腕骨を覆い、肩関節の動きに重要な役割を担います。 腱板は加齢や外傷を原因として損傷することがあります。特に棘上筋腱は肩関節の構造上損傷しやすいため、肩の腱板損傷というと、 棘上筋腱の損傷をさしていることが多いです。肩の側方挙上が60度以上不能な場合は棘上筋腱の断裂が疑われます。 若年者が外傷によって棘上筋腱の断裂を起こすことは稀ですが、50歳代以上では軽い捻挫程度でも断裂を引き起こす場合があります。 症状は、疼痛、動作時痛、夜間痛のほか、肩の挙上制限が見られます。

治療方法

主にMRI検査により診断されます。 治療は、部分的な断裂の場合は痛み止め薬や麻酔注射などを使った保存的治療となります。完全に断裂している場合は手術が必要になりますが、 多くはありません。

後遺障害等級

機能障害としては12級か10級、神経症状としては14級か12級の認定となります。

認定事例

35歳男性がオートバイで直進中、路肩に停車中の自動車が突然発進し接触。バイクは転倒し右鎖骨開放骨折、右肩腱板損傷、頸椎捻挫の傷害を受けました。 鎖骨は開放骨折のため手術を行いプレート固定がされました。 事故から1年後に肩の痛みを残し症状固定となり後遺障害認定を受けましたが、初回は非該当という結果でした。 MRI検査は実施済みでしたが、損傷が判然としないという理由で非該当の認定でした。 男性は肩が半分程度しか動かせなくなり、転職を余儀なくされています。 そこで医師と相談して別の医療機関でより高度な画像検査を受け、さらに症状経過などを資料により明確にしました。 新たな画像と診断書等により異議申立を行ったところ、機能障害で12級に認定されました。

TFCC損傷(三角線維軟骨複合体損傷)

どういう傷害か

転倒時に手をついて手首が背側に強く曲げられた場合に負いやすい怪我です。 事故で手首を傷め、数ヶ月経過しても痛みがとれなかったためMRIを撮ってみたらTFCC損傷(ティーエフシーシー)といわれたという方が多いです。 手首の小指側あたりが痛みます。 TFCCとは、手首の尺骨側にある軟骨や靭帯のことです。関節円盤、遠位橈尺靭帯、尺骨月状骨靭帯、尺骨三角骨靭帯などで構成され、手根骨、橈骨、尺骨間の安定に役立っています。 これが損傷することで、手首の痛みが長期間続きます。

治療方法

通常はサポーターなどによる固定治療がとられます。効果が得られない場合は関節内への麻酔注射が行われる場合もあります。 損傷と症状の程度によっては、手術がされることもあります。現在は関節鏡による人体への侵襲が少ない方法が主流のようです。 マイクロサージャリ―といって、手首に小さな穴をあけるだけの方法です。 三角線維軟骨複合体損傷かどうかの検査は、MRIや関節鏡が使用されることが多いです。

後遺障害等級

神経症状として14級または12級に認定されます。 医師がTFCC損傷と診断しても、後遺障害等級が認定されない場合もあります。MRIでは損傷が判然としない場合が多いからです。 TFCC損傷に限ることではありませんが、等級認定されるとされないとでは、損害賠償額に大きな違いがでます。事故当初から手首の治療をしていて、 後日TFCC損傷と診断された場合は、仮に等級が非該当となっても、異議申し立てを検討すべきでしょう。 的確な資料を提出することにより、妥当な判断がされる可能性がありますので、簡単にあきらめるべきではありません。

認定事例

62歳自営業男性が優先道路を自動車で直進中、わき道から右折進入してきた軽自動車と衝突し、衝撃で反対車線に飛び出して停止。 車は大破し、全損となりました。左手関節捻挫、頸椎捻挫、腰椎捻挫で治療を開始し、約8ヶ月間治療後、左手関節痛を残し症状固定となりました。 初回の後遺障害認定では非該当となったため、MRIと神経学的検査を依頼し、新たな医証として異議申し立てを行い第12級に認定されました。。

 
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