高次脳機能障害の治療とリハビリ

交通事故オンライン後遺障害編

伊佐行政書士事務所
〒278-0051千葉県野田市七光台316-17
  1. 高次脳機能障害とは
  2. 高次脳機能障害の症状
  3. 治療とリハビリ
  4. 一般的なリハビリの流れ
  5. 様々な問題
  6. 行政による医療・福祉サービス提供のための診断基準
  7. 福祉制度 「高次脳機能障害標準的訓練プログラム」と「高次脳機能障害標準的社会復帰・生活・介護支援プログラム」
  8. 様々な公的支援制度
  9. 障害者自立支援法と介護保険法

高次脳機能障害とは

交通事故で脳に外傷を受けたあと、精神の障害で社会生活が上手くできなくなることがあります。 症状が重い場合は相応の後遺障害等級に認定され、妥当な損害賠償を受ける事が可能となりますが、 目に見える部分の症状が軽い被害者は、外見上は事故前の状態に回復しているように見えるため、妥当な後遺障害等級が認定されない場合があるのです。 家族も完治したものと喜び、社会復帰も実現したが、いざ会社や学校に戻ってみると「新しいことを憶えられない」、「計画を立てられない」、 「感情のコントロールができない」などのことから周囲から孤立し、退職に追い込まれます。 家族は「まだ疲れているのだろう」、「事故のために少しイライラしているのだろう」程度に考えていたのですが、会社を辞めるころになってようやく「これはおかしい」と気がつくことも多いです。

「高次脳機能」というのは、脳が複雑な計算を行う機能のことです。例えば物を見たり、音を聞いたりした後に、それがどういうもので、どういう役割を担うのか、などということを計算する働きといえるでしょう。脳の高次機能が障害されると、記憶障害、注意障害、意欲の低下など、様々な症状がみられるようになりますが、どのような症状が出るか、また、その程度についても様々であるため、障害の程度を客観的に認定することが難しくなっています。

なお、脳の高次脳機能に対して、一次機能という言葉がありますが、これは目や耳で受け取った情報を脳に伝える機能のこと等を指します。

高次脳機能障害の症状

高次脳機能障害は、事故などによる頭部外傷以外にも脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、アルツハイマー病などでも起こりうるとされています。 頭部外傷は頭蓋骨骨折、局所性損傷(脳挫傷や硬膜外血腫)、びまん性脳損傷(脳震盪やびまん性軸索損傷)などに分けられます。

高次脳機能障害では様々な症状が見られますが、大きく分類すると例えば次のような分け方ができます。①認知障害、②行動障害、③人格変化などです。 具体的には①の認知障害は、記憶障害、集中力や注意力の低下、判断力の低下などが挙げられます。②の行動障害は、持続力の低下、同じ失敗を繰り返す、意欲の低下などが挙げられます。 ③の人格変化は、感情が変わりやすい、攻撃的、幼稚、多弁などが挙げられます。

  • 【典型的な症状の例】
  • 記憶・記銘力障害、集中力障害、判断力低下、人格の変化など。
  • 感情の起伏が激しくなったり、気分が変わりやすくなったりします。
  • 場所をわきまえずに怒って大声を出したりします。
  • 話がまわりくどくなったりします。
  • 周囲の人間との人間関係が悪くなることがあります。
  • 病識がない場合があります。
  • 行動を計画したり、実行することができなくなります。
  • 羞恥心が低下します。
  • 暴力をふるいます。
  • 半空間無視。例えば左側にあるものだけ無視します。
  • すぐに他人に頼ります。
  • こだわりが強くなります。
  • 忍耐力がなくなります。
  • 歩行にふらつきがみられます。
  • 笑うべきでない場面で、笑ったりします。

どのような症状が、どのくらいの重さで残るかは人により異なります。一緒に生活していても変化に気がつきにくい程度の人もいますし、数時間一緒にいただけで異常が感じられるほど 明らかな症状を呈する人もいます。家庭内だけでは症状が見つけられず、社会に出てからようやく異変に気がつくということもあるのです。

40代の事故後無職になった男性は退院後、車の運転をしばらくしていましたが、ある日たまたま家族を乗せて出かけたところ、極端に車道の左端によって走行していることがわかりました。速度もゆっくりしており、 周囲の車の流れに乗れていません。目的地は何度もいったことがある場所だったのですが、途中で道を間違えたり、目的地の前を通り過ぎてしまったりします。ようやく到着し、 駐車場に車を入れようとするのですが、バックをしながらハンドル操作をすることが上手くできないようで、店の入り口から遠く離れた、周りに車が止まっていないスペースに停めていました。

一人暮らしをしている男性は、買い物が苦手になりました。冷蔵庫には食品が整然と並べられていますが、同じ牛乳パックが3本ありました。1本あれば十分なのですが、気がつかずに 次から次へと購入してしまったようです。3本とも飲み口は開けてありました。ほかにも、小鉢に割りいれた生卵が二つ置いてありました。ご飯にかけて食べるつもりだったらしいのですが、 他のおかずの準備をしている間に、卵を割ったのを忘れてしまうのだそうです。食べ終わってから、準備されている卵を見て、自分で割ったのだろうかと考えてしまうことがあるそうです。 出かけるときに携帯電話や財布を忘れる事はしょっちゅうです。銀行でお金をおろして、カードをATMのところに忘れてきたこともあるそうです。

一般企業で働く男性は、復職後、仕事がうまくいかずに悩んでいます。上司に来週のミーティングの準備をするように命じられても、何をすべきなのか見当がつきません。会議室の手配、 資料の準備、参加者への連絡などいちいち指示を出され、何とか進めてはみたものの、目的が把握できていなかったり、資料に不足があったり、連絡するのを忘れていたりで、結局他の人が 準備をし直すことになりました。しかし企画を作る才能は以前からあり、その能力は維持されています。案を出すことはできても、それを他人に伝達することが上手くできなくなっているようです。 友人との飲み会の約束も何度も忘れてすっぽかしています。当日連絡があっても、約束していたことが思い出せません。その一方で、自分が憶えている約束については、 何度も約束の確認の電話を仕事中に入れてくるため、相手を怒らせてしまいます。

実家に両親と住んでいる女性は、都内へ勤めるOLでした。事故のため退職せざるを得なくなり、今はレストランでアルバイトをしています。手際がよく、細かいことに気がつく女性でした。OL時代は 朝早く家を出るため、身支度も手慣れたもので、30分もあれば自分で用意した食事をとって出かける事が出来ました。ところが事故後、動きが緩慢になってしまいました。自分から考えて 行動することが苦手になってしまったようです。身だしなみはきちんと整えて出かけるのですが、朝は母親が用意した食事をとって身支度を整えるまでに2時間くらいかかるそうです。 ひとつのことを終わらせてからでないと、次のことを始められないのではないかとご両親はいっておられました。第一印象がしっかりした感じで、テキパキ動くように見える ので、アルバイト先でも最初は接客を教えられていたのですが、手順を憶える事が出来ない、注文を聞き忘れるなどのことがあり、今は厨房の手伝いや雑用に回されることが多くなているようです。 ご本人はそうした待遇に不満を持っており、自分のミスではなく、周りの人の不理解や嫌がらせを受けていると受け止めているようです。

ご両親と同居している30代の女性は、事故後始めたアルバイトを5年ほど続けています。 先輩が退職したことをきっかけにアルバイトの 責任者を任されることになりました。 コツコツと真面目に仕事をこなす姿勢が評価されたようです。責任者の仕事は新人アルバイトの教育と、シフトの管理です。 女性は責任ある立場になったことで、より一層仕事に打ち込むようになりました。ところがしばらくすると、 職場の人間関係がギクシャクしはじめました。 新しく採用されたアルバイトも長続きしません。原因を追究してみると、 どうも女性の仕事のやり方に問題があるようです。例えば簡単なシフトのローテンションを 考えるのに、 10分もあればできそうなことを3時間もかけてやっています。それも今までは考慮されていたアルバイト個人の事情が全く考慮されなくなり、 各自の負担感が増してしまったようです。新人の教育も親切で熱心にやっているのですが、職場で長年決まっていたルールを自分流にアレンジし、 他のアルバイトに相談することなく新人にだけ教えたりしたため、「やり方が違う」「誰に教わった?」というような問題が頻発するようになりました。 原因が女性だとわかり注意を受けたのですが、女性は問題が自分にあるのではなく、新人にあると思いこんでおり、 やさしく「独自のやり方」を繰り返し教え続けていて改善できません。強く注意を受けても、何が悪いのか理解できていないようです。

20代の男性会社員は学生時代に事故に遭いました。入社してから同期と一緒に様々な研修を受けて仕事を憶えていきましたが、 突出して憶えが悪く、 いつも上司をイライラさせていました。真面目に仕事を憶える気がないと思われているようです。 男性も記憶力に問題があることがわかっているのでメモを とるようにしていますが、仕事中にメモを見直したり、 メモを忘れたりすることもあります。上司に暑気払いの幹事を任された時は、会場の予約はしていたものの、 社員への連絡に時間がもれていたり、会費の案内がもれていました。当日も進行役ができず、見かねた上司が同期の男性に進行役を急きょ振りました。 現在は工場のラインの保守点検の部署にいますが、一つ一ついわれたことは確実にこなしますが、まとめて指示されたり、 手順を考えてやらなければならないことは、 一人ではできないようです。

脳の損傷部位と障害の関係

  • 1)前頭葉眼窩部の損傷
    社会性が失われ、過剰な興奮、攻撃的行動などがみられます。
  • 2)前頭前野内側部の損傷
    注意力や集中力の低下がみられます。
  • 3)前頭前野背外側部の損傷
    判断力や発動性の低下がみられます。
  • 4)大脳辺縁系の損傷
    感情を読み取ったり、感情を表す処理が障害され、コントロール力の低下がみられます。

高次脳機能障害の治療とリハビリ

脳挫傷などで脳に外傷を受けると、脳神経外科で治療を受けることになります。その後身体能力の回復のためにリハビリ科にかかることが多いです。 高次脳機能障害と診断される場合は、その障害の程度に応じた専門的なリハビリを受ける事が望まれます。 交通事故による頭部外傷後の高次脳機能障害患者は、重度の場合は身体的な障害も重いことが多く、自立しての生活は困難ですが、 比較的軽度であれば、就学・就労も可能な場合があります。 何の準備もなしに社会生活に復帰した場合、記憶力や情動などの問題点から、 周囲の人と摩擦を生じさせることがありますが、 適切なリハビリテーションを受けることにより、復帰後の生活をスムーズに行うことができるようになります。

高次脳機能障害では、「記憶障害」、「注意障害」、「遂行機能障害」、「社会的行動障害」などの症状がみられます。 これらは、学習教材やゲーム、 特定の作業の反復やグループ訓練など、様々な方法で訓練することが可能であり、 医師や言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、臨床心理士などの専門家が関与する 適切なリハビリテーションを受けることによって、 成果が得られると考えられています。リハビリは、病院、身体障害者更生施設、授産施設、リハビリテーションセンター、 障害者雇用支援センターなどで行われることが多いようです。 時期としては、早期に着手したほうが改善傾向が高いという報告があります。 どの病院でも高次脳機能障害に対応するリハビリの受け入れ態勢があるわけではありません。 生活訓練や職能訓練ができる施設を探す必要があります。

一般的なリハビリの流れ

  • 患者のニーズに応じた計画が立てられます。
  • 急性期のリハビリ・・・筋力の増強や関節可動域の訓練が中心となります。
  • 回復期のリハビリ・・・食事、排せつ、入浴などの日常生活動作の訓練が中心となります。
  • 慢性期のリハビリ・・・就学や就労のための、職業リハビリテーション等が行われます。

【認知リハビリテーション】
認知障害とは・・・記憶・記銘力障害、集中力障害、遂行機能障害、判断力低下、病識欠落などのことをいいます。 反復練習、情報の体制化、視覚イメージ形成等による訓練、注意の持続性、選択性などを高める注意プロセス訓練などが行われます。

【生活訓練】
食事、調理、洗濯、衛生、買い物などの日常生活活動、公共交通機関の利用、対人関係についてなどの訓練が行われます。

【職業的リハビリテーション】
就労ニーズのある者に対して、カウンセリング、職業評価、職業能力訓練、就労支援などが行われます。

Q&A

Q 高次脳機能障害の治療はどのようなものがありますか?

A 早期にリハビリテーションを実施することで、治療効果を得られる場合があります。ケースによって薬物療法が取られることもあるようですが、 手術や薬で劇的に良くなるといったことは、現在のところないようです。

Q 認知機能のリハビリテーションとはどんなことをするのですか?

A 反復的な練習により記憶訓練を行ったり、欠落しがちな自己の障害への認識を高めたりします。日記やメモを利用したリ、会話を利用したりもします。

Q 高次脳機能障害のリハビリテーションはどこで受けられるのですか?

A リハビリテーションの目的によっても変わってきますが、リハビリテーションセンターや、障害者雇用支援センターなどがあります。外傷の治療にあたっている主治医に相談してみましょう。

Q リハビリテーションはどれくらいの期間受けるべきでしょうか?

A リハビリテーションの内容によって異なるため、一概にはいえませんが、認知障害については2年程度で効果が少なくなるという見方もあるようです。

Q リハビリテーションはどういった人たちがしてくれるのですか?

A 理学療法士、作業療法士。言語聴覚士、臨床心理士などが行います。こうした専門家以外に、家族が参加することも大切です。

Q どの様な検査で高次脳機能障害がわかりますか?

A MRIによる脳の検査や、様々な神経心理学的検査によって判断されています。

様々な問題

高次脳機能障害となった被害者とその家族には、様々な問題が降りかかります。何から始めればいいのか、 目の前の雑多な問題解決に追われ、長期的な展望が描けない人も多いでしょう。 退院したあと、誰に相談すればよいのかわからず、問題を抱え込んだまま苦しんでいる人がいます。 相談先を見つけても、窓口が多すぎて、精神的に参ってしまっている人も大勢います。 「経済的な安定」「就労支援」「損害賠償請求」など、クリアしていくべき問題は沢山あります。

損害賠償請求の問題

交通事故の損害賠償請求を行う上で、高次脳機能障害はいくつかの難しい問題を抱えています。中でも一番問題となりやすいのは、目に見えにくい障害であるため、 適切な後遺障害等級認定がなされにくいということでしょう。交通事故の損害賠償では、後遺障害が残った場合は、第1級から第14級に等級付けがされて、等級に応じた金額が 請求できるようになります。高次脳機能障害の場合は、第9級、第7級、第5級、第3級、第1級のうちのどれかが認定されることになりますが、認定基準に曖昧な面があるため、 認定される等級が低いと、「もっと高い等級が妥当なのではないか」という疑問が出てきます。

等級認定は、認定する機関が積極的に調査して、公平な審査を行うという体制にはなっていません。もちろんそれに近づけるような調査が行われてはいるのですが、限界があります。 医学の曖昧さや医師により差がある治療方針や診断書の書き方、その他の理由によって、同程度の障害を抱えているのではないかと思われるようなケースであっても、第9級となったり、 第5級となったりする人が出てきてしまうのが現実の姿なのです。ですから認定された等級が本当に妥当なものなのかどうか、一度は疑ってみて、専門家の意見を聞いてみるべきでしょう。

どのような症状があり、どのような医学的所見があれば第何級になる可能性があるのか判断できるのは、 後遺障害等級認定に詳しい、交通事故を専門に取り扱っている行政書士や弁護士です。高次脳機能障害の後遺障害認定について経験の豊富な人に相談するのが一番確実です。

家族の抱える問題

39歳男性。経理部課長。専業主婦の妻と小学生の長男、次男の四人家族。車同士の衝突事故で脳挫傷、びまん性軸索損傷、高次脳機能障害。 主な症状は失語、失行、注意力障害、記憶障害。片麻痺のためふらつきがある。入院リハビリでは車椅子から杖歩行まで回復。

入院中、奥様へ会社から連絡があり、今後の見通しについて尋ねられました。会社は親切だったので、奥様はいずれ復職させてもらえるものと考えていましたが、 会社の担当者がいうには、ご主人が復職するなら人員の補充ができない。回復し、復職するのならいつ頃になるのか見込みが知りたいとのことでした。 ご主人は、歩行などの運動機能はずいぶん回復していましたが、コミュニケーションが円滑にできない、記憶や注意力に問題があるなどで、 到底元の職場で同じように働ける状態ではありませんでした。職場の人は何度か見舞いに来ている中で、杖歩行をしているご主人を見て、 デスクワークであれば特に支障なく復職できると見込んでいたそうです。暗に退職を勧められたような気がして、奥様は気が気ではありませんでした。 生活の基盤を失うことになるからです。

医師と相談すると、運動面の回復は進んでも、脳機能についてはすぐには結論を出せない。少なくとも1年以上は経過をみるべきという話をされました。 その時の状態とご本人の希望、会社の受け入れ態勢などによって、復職可能かどうか判断する必要があるとのことでした。 事故前と全く同じように働けるようになる可能性は低いので、職場にも障害を理解し、受け入れ態勢を整えてもらう必要があります。 ご主人の失語や注意力障害などが、仕事のどのような場面で支障があるかを理解してもらい、どのようなコミュニケーションの取り方や手順をとれば 上手くいくのかを考えておく必要もあります。 奥様は医師の考えや高次脳機能障害の事などを整理し、会社の担当者と話し合いを持ちました。 結果、結論は先に持ち越され、職場の配慮もあり、休職扱いとしてもらう事で合意ができました。

1年が経過し、ご主人は復職を果たされました。しかし復職前は前向きだったご主人も、長時間の勤務に耐えきれず、半日で帰りたくなってしまう事や、 以前のように仕事をこなせない苦痛などが重なり、結局は自ら退職することを選びました。 奥様としては協力してくださった会社に申し訳ない気持ちがありましたが、1年の間に自らの職も見つけ、 家族も現実を受け入れる時間を得ることができたので、休職することができてよかったと考えています。

Q&A

Q どんな怪我をすると高次脳機能障害になるのですか?

A 脳挫傷や脳内血腫、くも膜下出血などの診断がされた後に、高次脳機能傷害と診断される場合があります。交通事故などによる頭部外傷以外にも、脳梗塞などの 脳血管疾患が原因で起きることがあります。長時間意識を失った後に回復したようなケースでよく見られます。

Q 息子が高次脳機能障害ではないかと心配なのですが、どうすればわかりますか?

A 病院で検査を受けてください。日常生活の状況や、神経心理検査、MRI画像などから診断されます。 脳神経外科がいいでしょう。息子さんの行動や性格などをメモしておくと客観的に見ることができます。

Q どのような問題がおきますか?

A 身体的な障害が軽い場合は、社会生活が自立している人もたくさんいます。しかし人とのコミュニケーションが上手くいかなかったり、約束を忘れたり することで、それが障害と理解されずに、人間関係を悪化させるということが起こり得ます。また、行政サービスや交通事故の損害賠償請求においても、障害の程度が正しく認識されずに、 不利益を被ることも考えられます。

Q 高次脳機能障害に治療法はあるのですか?

A 高次脳機能障害が、手術や薬物により完治するということはないようです。

Q 高次脳機能障害は治るのでしょうか?

A 早期に適切なリハビリテーションを受けることにより、症状がある程度まで改善することが期待できます。

Q 高次脳機能障害を一人で生活させておいて危険はありませんか?

A 例えばガスをつけたのを忘れてしまい、ナベを空焚きさせてしまうなどのことがある場合は、一人暮らしは心配ということもあろうかと思います。 しかし一人暮らしをしている人もたくさんいます。その人の障害の内容と程度によって考えればよいことです。

行政による医療・福祉サービス提供のための診断基準

Ⅰ.主要症状等

  • 1.脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
  • 2.現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。

(※)第1項の受傷や発症の事実とは、器質的病変を生じた疾病と日時が特定できることを指します。第2項は、単に認知障害が認められるという事だけでなく、 それによって生活に支障をきたしているという事が必要です。

Ⅱ.検査所見

  • MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が 存在したと確認できる。

(※)通常のMRI、CTのほか、核医学による検査方法での確認も可能とされます。 び慢性軸索損傷のCT画像所見は期間の経過とともに消えていく傾向があるため、過去の診断書で器質的病変が確認できる場合も診断基準を満たすとされています。

Ⅲ.除外項目

  • 1.脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有するが上記主要症状(Ⅰ-2)を欠く者は除外する。
  • 2.診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
  • 3.先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害、進行性疾患を原因とする者は除外する。

(※)第1項は例えば失語症は身体障害者手帳の対象となっているため、認知障害が失語のみである場合は除外するという事です。 失語症のほかに記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害がある場合は、除外されることはありません。 第2項は、高次脳機能障害の原因となる疾病の発症日以前から同じ症状をもっている場合と、発症日以前から確認されている画像所見は診断根拠としないということです。 第3項は別の支援体制の利用を予定するため除外されるものです。

Ⅳ.診断

  • 1.Ⅰ~Ⅲをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
  • 2.高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を脱した後において行う。
  • 3.神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。

なお、診断基準のⅠとⅢを満たす一方で、Ⅱの検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症例については、 慎重な評価により高次脳機能障害として診断されることがあり得る。また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、 適時、見直しを行う事が適当である。

(※)参考書籍 journal of clinical rehabilitation v16-no1

福祉制度 「高次脳機能障害標準的訓練プログラム」と「高次脳機能障害標準的社会復帰・生活・介護支援プログラム」

診断基準を満たした人たちは、重症度にあった医療・福祉サービスを受けることとなりますが、重症度により社会生活における帰結が異なる(施設入所から就職支援まで)ため支援・訓練体制も異なり、 そのため医療と福祉の連携が課題となっていました。そこで全国共通で使用できる「高次脳機能障害標準的訓練プログラム」が作成され、その実践から、 医学的リハビリテーションは受傷後早期に開始すること、多職種がリハに携わることの重要性が指摘されました。 また地方支援拠点を設置し、そこに支援コーディネーターを配置し、支援終了までの一連の支援プログラムを提供することなどが「高次脳機能障害標準的社会復帰・生活・介護支援プログラム」にまとめられました。 これにより重症度や障害の特性に基づいた支援を可能にするプログラムが示されました。

様々な公的支援制度

【医療費助成】
①障害者自立支援法によって、医療費が助成される場合があります。②重度心身障害者医療費助成制度によって、医療費が助成される場合があります。

【障害者手帳】
①身体障害者手帳、②精神障害者保健福祉手帳、③療育手帳があり、該当する福祉サービスを受ける事ができます。

【障害年金】
要件を満たしていれば、障害年金が給付されます。国民年金の障害基礎年金、厚生年金の障害厚生年金があります。

【介護保険】
年齢等の要件を満たせば、市町村で要介護認定を受け、対応する介護保険サービスが受けられます。

【生活費の保障】
①生活保護、②特別障害者手当、障害児福祉手当、③健康保険の傷病手当金、④心身障害者福祉手当など。

【税金の控除】
①所得税と住民税に対して、障害者控除や特別障害者控除が適用される場合があります。②自動車税や自動車取得税の控除が受けられる場合があります。

【職場復帰支援(リワーク支援)】
障害者職業センターの支援により、円滑な職場復帰を目指します。

【職を得るための支援策】
①障害者就業・生活支援センター、②ジョブコーチ支援、③職業訓練、④精神障害者社会適応訓練事業、⑤就労移行支援事業所、

相談機関など

様々な相談機関があります。それぞれに特徴がありますので、自分に合った相談先を探しましょう。

【後遺障害に詳しい行政書士】
後遺障害認定や損害賠償請求などの各種手続きを総合的にサポートいたします。

【当事者団体や家族の会】
友の会などの名称で活動されています。同じ障害を持つ家族としての視点から様々な相談ができたり、情報提供や、支援を受けられます。

【医療ソーシャルワーカー(MSW)】
退院後の相談窓口の情報提供をしてくれる場合もあります。

【高次脳機能障害者支援拠点機関】
障害者自立支援法に定められ、各都道府県に設置されています。リハビリテーションセンターなどの名称がついている医療機関が多いです。 患者や家族からの相談受付け、情報提供、地域の支援ネットワークの構築、高次脳機能障害という障害の啓発や関係者の人材育成などの事業を行っています。

【自治体等の地域の相談窓口】
保健福祉課、福祉事務所、地域包括支援センターなど。

障害者自立支援法と介護保険法

18歳以上65歳未満の人は障害者自立支援法が適用され、65歳以上の人は介護保険法が適用されます。

【障害者自立支援法】
自立訓練・就労移行支援・就労継続支援などの訓練の給付、居宅介護、 行動援護、ショートステイ、療養介護、生活介護、施設入所支援などの介護給付などのサービスがあります。

【介護保険法】
訪問介護、通所介護、通所または訪問リハビリ、デイサービスなど。

就労支援

【障害者職業センターによる支援】
どのような支援が必要となるのか、個別に評価を行い、課題を決めます。課題を克服するための訓練を行います。 職場体験実習等を通して復帰および定着を目指します。

【ジョブコーチとは】
ジョブコーチは、支援を必要とする障害者と事業主の間に入り、個別に最適な支援計画を策定します。ジョブコーチは障害者に対して作業の遂行について助言したり、 職場での人間関係の改善などについて助言します。事業主に対しては、障害者にどのような配慮が必要か、どのような職務が向いているかなどを助言します。その他、同僚や家族に対して助言を行います。

Q&A

Q 高次脳機能障害支援普及事業とはなんですか?

A 厚生労働省から委託された都道府県が主体となり、リハビリテーションセンターなどの支援拠点期間を設置し、専門的な支援や相談を受けられる体制づくりを進めるものです。

Q 高次脳機能障害者は身体障害者手帳を取得できますか?

A 身体障害者手帳を取得するには、身体障害者福祉法の別表の程度等級に該当する必要があります。身体上の障害がある場合のみ該当することとなりますので、 高次脳機能障害者でも、身体上の障害が伴う人の場合は、該当する可能性があります。

Q 高次脳機能障害者は知的障害者福祉法のサービスを受けることができますか?

A 都道府県によって違いがありますが、概ね18歳までに高次脳機能障害となった場合はサービスを利用できます。成人となってから高次脳機能障害となったケースでは、サービスを 利用できません。

Q 高次脳機能障害者は精神障害者保健福祉手帳を取得できますか?

A 取得可能ですが、障害の程度によっては取得できないこともあるようです。

Q 重度障害者には、どのような行政サービスがありますか?

A 障害者自立支援法による、介護給付や訓練等給付、補装具給付などがあります。

Q 外出などは自立している軽度障害者には、どのような行政サービスがありますか?

A 支援機関のサービスが不要な人も、相談サービスが活用できます。

Q 高次脳機能障害者でも、公的年金の受給はできますか?

A 障害の程度が年金受給の要件に達していれば受給できます。

Q 福祉制度を利用することで、戸籍に障害者と記録されたりするのでしょうか?

A 身体障害者手帳の手続きをしても、戸籍に記載されることはありません。

Q 高次脳機能障害で自賠責保険の後遺障害等級が認定されたら、後見人や保佐人などを選任しなければなりませんか?

A 自賠責保険の後遺障害等級と後見制度とは、直接の関係はありません。認定されたからといって、必ずしも後見人等を選任する義務はありません。

Q 後見人を選任するメリットとデメリットを教えてください。

A 後見人を選任した場合、被後見人の一定の法律行為を取り消すことが可能になります。 例えば不必要な不動産を購入したとか、不要な高額商品を購入した等の場合です。後見人は家族がなることが多いですが、定期的に被後見人の 財産の状態などを家庭裁判所に報告する義務もあるため、それを負担に感じる方もいらっしゃいます。高次脳機能障害であっても、意思能力に問題がなければ、後見人選任が 認められない場合もあります。

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