1. 鎖骨骨折とは
  2. 異議申し立ての事例
  3. 脊柱の後遺障害
  4. 体幹骨の後遺障害
  5. 呼吸器や循環器などの胸腹部臓器の後遺症
  6. 生殖器の後遺障害

鎖骨骨折とは

どういう傷害か

鎖骨には上肢や肩甲骨の運動・安定のほか、神経や血管束の保護、挙上による呼吸の補助などの役割があります。 鎖骨は上から見るとS字のカーブを描く形をしており、近位(胸側)、中央、遠位(肩側)に三分割すると中央部分(骨幹部)が最も骨折しやすくなっています。 胸側の端を胸鎖関節といい、肩側の端を肩鎖関節といいます。

鎖骨に直接外力がかかり骨折することは少なく、外方よりの介達外力による骨折がほとんどですが、直達外力による骨折では腕神経叢損傷を伴う場合もあります。 遠位端骨折では烏口鎖骨靭帯損傷を伴うものは機能障害を残しやすいとされています。 偽関節となるケースも多いですが、無症候性であれば治療の必要はないとされます。症候性偽関節の場合は骨切や移植術が行われます。

治療方法

鎖骨の中央部付近が骨折した場合は、変形した状態で骨癒合しても運動障害が残る可能性は低いため保存的治療が選択され、 クラビクルバンド(鎖骨固定帯)による固定などで骨癒合を待ちます。 鎖骨の遠位端・近位端骨折や、転位の大きい場合、第3骨片のある場合は、骨癒合があまり期待できないため、手術が行われます。 手術侵襲が少ないキルシュナー鋼線で鎖骨を固定する方法が一般的ですが、プレートをネジ固定する場合もあります。

後遺障害等級

保存的治療をした場合は変形治癒することが多く、12級5号に認定されるケースが多いです。 変形の程度は裸体になった時に変形がわかる程度でなければならず、レントゲンなどで癒合部に肥厚がみられる程度では変形による後遺障害認定はされません。 骨癒合せず偽関節となった場合は骨盤骨から骨移植をする場合があります。この場合、平成16年の新基準以前は骨盤骨の変形と併合で11級に認定されていましたが、 現在の基準では骨採取程度では等級に該当しないこととされたため、12級5号のみの認定となっています。

痛みや可動域制限を伴う場合は、変形障害の12級とは別に神経症状や機能障害で12級に認定され、併合11級となる場合があります。 弊事務所でも異議申し立てにより併合11級となった例が多数ございます。

異議申し立ての事例

事故態様

58歳会社員男性が自転車で交差点を横断していたところ、後方から自動車に追突され転倒し、左鎖骨を骨折した。

傷病および治療経過

左鎖骨骨折。手術は行わずクラビクルバンドによる固定で保存的に治療をしていたが上手く骨癒合せず、その後骨移植を行ったため治療に1年半かかった。痛みと可動域制限を残して症状固定し、変形障害で12級の認定がされた。

異議申し立て

医師に医療照会を行ったところ機能障害と変形障害で併合11級となる可能性があったため、検査と診断書作成を依頼した。 その結果を踏まえて異議申し立てを行ったところ、併合11級に認定された。

脊柱の後遺障害

第6級5号の脊柱の著しい奇形とは、圧迫骨折などが確認でき、後彎や側彎が生じている場合で、前方椎体高と後方椎体高の高さを比較して判定します。 例えば変形した二個以上の椎体の前方椎体高の合計と、後方椎体高の合計との差が、 減少した後方椎体高の一個当たりの高さ以上である場合は著しい変形とされます。

変形障害は、等級表には第6級か第11級しか設定されていませんが、中程度の変形を残した場合には第8級が準用されます。 中程度の変形とは、例えば変形した一個以上の椎体の前方椎体高の合計と、後方椎体高の合計との差が、 減少した後方椎体高の一個当たりの高さの50%以上である場合は中程度の変形とされます。

単に圧迫骨折を残す場合や脊柱固定術が行なわれた場合などは単なる変形で11級となります。 頚部または腰部のいずれかの保持に困難があり、常に硬性補装具を必要とする場合は8級が準用されます。

脊柱に著しい奇形又は運動障害を残すもの第6級5号
脊柱に運動障害を残すもの第8級2号
脊柱に変形を残すもの第11級7号

関節の機能障害の評価方法

関節の機能障害は、可動域の制限の程度に応じて評価します。上下肢など、両側に関節があるものについては、健康な側(健側)と障害のある側(患側) とを比較することとなりますが、両側とも障害が残ったり、脊柱などの障害で健側との比較ができない場合は、参考可動域角度との比較で評価を行います。

部位名運動方向参考可動域角度
頸部屈曲(前屈)60
伸展(後屈)50
回旋左回旋60
右回旋60
側屈左側屈50
右側屈50
胸腰部屈曲(前屈)45
伸展(後屈)30
回旋左回旋40
右回旋40
側屈左側屈50
右側屈50

体幹骨の後遺症

体幹骨骨折では、鎖骨の変形治癒が問題になるケースが多くあります。鎖骨を骨折した場合、手術がされることは多くはなく、 どちらかというと装具を用いた保存療法がとられることが多いです。 そのために骨折部分がまっすぐにくっつかず、変形治癒することがあります。 変形の度合いが、裸体となったときに明らかにわかる程度である場合は、後遺障害として12級に認定されます。 レントゲンで変形が確認できるに過ぎない程度では、認定されません。 肋骨が変形治癒または切除された場合、それが1本でも2本でも、一つの障害として評価されます。

骨盤骨を骨折した場合に、股関節の機能障害や痛みが残る場合があります。 また、女性の場合は産道狭窄などにより、通常の分娩が困難となるケースもあります。 骨盤骨の単なる変形は12級となる可能性がありますが、股関節の機能障害を伴う場合や、産道狭窄がある場合は等級が異なってくる場合もあり、注意が必要です。 骨移植のための腸骨採取では後遺障害とはなりません。

鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨、又は骨盤骨に著しい変形を残すもの第12級5号

骨折について

  • 【完全骨折と不完全骨折】
    完全に折れてしまっているか、ひびがはいっているだけかの違いです。
  • 【単純骨折と複雑骨折】
    単純骨折とは皮下骨折、複雑骨折とは開放骨折(骨が皮膚から飛び出している状態)のことをいいます。 因みに骨が細かく砕けるのは、程度により複合骨折とか粉砕骨折などといわれます。
  • 【剥離骨折】
    靭帯や腱の付着部の骨がはがれるものをいいます。捻挫や脱臼などの際に起こりやすいといわれています。
  • 【第三骨片】
    骨のかけらのことをいいます。

呼吸器や循環器などの胸腹部臓器の後遺症

呼吸機能の障害は動脈血酸素分圧と動脈血炭酸ガス分圧の検査結果、スパイロメトリーの結果や呼吸困難の程度などにより判定されます。

循環器の障害は心機能低下の程度や除細動器、ペースメーカーの植え込みなどにより等級が決められます。

腹部臓器については消化吸収障害の程度や胃の切除の有無、ダンピング症候群の有無、小腸の切除の程度、人工肛門の造設などにより判断されます。

胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの別表第1 第1級2号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの別表第1 第2級2号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの第3級4号
胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの第5級3号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの第7級5号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの第9級11号
胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの第11級10号
胸腹部臓器の機能に障害を残すもの第13級11号

尿道狭窄

尿道に外傷を負ったことによる瘢痕形成などが原因で尿道が狭くなり、排尿障害を生じます。 シャリエ式尿道ブジー第20番が通り、定期的に尿道拡張術を行う必要のあるものは14級相当となります。 より細い構造の糸状ブジーが必要なものは11級相当とされます。カテーテルがストロー状の構造になっているのに対し、 ブジーは管構造を持っていないため導尿ができません。

生殖器の後遺障害

常態として精液中に精子が存在しないもの、卵子が形成されないもの、両側の卵巣を失ったものなどは7級が準用されます。狭骨盤は程度により11級が 準用される事があります。一側の睾丸(高度の萎縮を含む)や卵巣を失ったものの場合は13級が準用されます。男性の心因性のインポテンツは、神経障害として評価される可能性があります。

両側の睾丸を失ったもの第7級13号
生殖器に著しい障害を残すもの第9級16号