異議申し立て

書き方・添付資料

後遺障害診断書

他覚的所見

症状固定

注意すべきこと

  1. 後遺障害認定手続きの全体的な流れ
  2. 認定手続きの詳細
  3. 認定に必要な条件は何か
  4. 等級認定のポイント ~ 成功する人の6つの法則

後遺障害認定手続きの全体的な流れ

  1. 治療を続けていると、それ以上はよくならないという時期がやってきます。それを症状固定といいます。
  2. 症状固定になったら、医師に後遺障害診断書を書いてもらいます。用紙は保険会社に送ってもらいます。
  3. 後遺障害診断書を保険会社に提出します。
  4. 書類は保険会社から損害保険料率算出機構というところへ転送されます。
  5. 損害保険料率算出機構の調査事務所で後遺症について調査が行われ、結果が保険会社に通知されます。
  6. 保険会社から被害者へ認定結果を通知します。
  7. 認定結果に納得がいかない場合は、保険会社に対して異議申し立てをすることができます。
等級認定のしくみと流れ

等級認定までの流れをみると、被害者の視線からは調査の対象は後遺障害診断書のみに見えますが、実際はそうではありません。 後遺障害診断書の記載内容は調査対象の一部分でしかないのです。他にも初診時からの治療経過や画像など、様々なことが認定に関係してきます。

※後遺障害診断書の提出先は、任意保険会社か自賠責保険会社か選ぶことができます。

※保険会社に書類を提出してから結果が出るまでの時間は一様ではありませんが、平均すると3カ月程度となります。

認定手続きの詳細

【1】後遺障害診断書の作成依頼

医師への話し方

症状固定となったら、医師に後遺障害診断書を書いてもらいます。特に決まった頼み方があるわけではありませんが、 もうそろそろ書いて欲しいという時期(症状固定)になったら診察の時にでも「先生、そろそろ後遺障害の申請をしたいのですが、 後遺障害診断書を書いていただけませんでしょうか。」と切り出します。

後遺障害診断書の医師への頼み方

医師の反応は様々です。 「では書きますから、用紙を持ってきてください。次の診察の時でもいいし、診察なしでも受付に渡しておいてくれてもいいですよ」 「では今月末まで様子を見て、最後にレントゲンを撮って、それで症状固定にするかどうか決めましょうか」 医師がまだ症状固定とは考えていない場合は「もう少し様子を見ましょう」といわれる場合もありますが、 基本的には医師の考えに従うべきです。

後遺障害診断書は、最終診察日から二週間程度で発行されることが多いです。被害者に渡されることが多いですが、保険会社に直接郵送される場合もあります。 被害者に渡される場合は、用意ができ次第電話連絡をしてくれることが多いです。

後遺障害診断書の内容について

記載内容は医師任せにすることが基本ですが、実のところ書き方は医師によりかなりバラツキがあります。 しっかりした診断書を書いてくれる医師を知っていればよいのですが、あらかじめそのような情報を得ることは困難ですので、 被害者としては最寄りの整形外科などに通院する以外に選択肢はありません。ある意味「運まかせ」で治療先を選ぶことになります。

診断書の書き方は医師によって違う

しかし過剰に心配する必要はありません。ほとんどの医師は必要な診断をし、患者とのコミュニケーションもとり、 必要な診断書は医学の専門家としての診断に基づいて書いてくださいます。記載内容に不備不足がある場合はしばしば見受けられますが、 事情を説明して補足を願い出れば、大抵は応じてもらえるものです。

それでもまれに、医師の中にも常識が通じない人がいます。ろくに診察もせず、「大丈夫だ、気のせいだ。」と言い放ったり、 「薬を出すから次は1ヶ月後に来ればいい。うちではそれ以上は診れない。」「診断書?決まったことしか書けないよ。」などと被害者の話はろくに聞かずに 自分の都合を押し付けてくる人です。こういう医師に当たった場合は、後のことを考えて転院したほうがよいかもしれません。

記載内容の補足の頼み方

診断書の記載内容に何らかの問題があり、補足をお願いしなければならない場合もあります。 症状を医学的にきちんと説明しているかどうか、 ポイントが詳しく記載されているか、後遺症に至ったプロセスが書かれているかなど、内容を工夫することも大切です。 診断書の内容の補足や修正は、事務的に対応してくださる先生もいらっしゃいますが、医師から見れば素人から診断に口を出されることになるのですから、 失礼のないようにお願いする必要があります。

医師にお願いするときは慎重に

ネットで得た付け焼刃の医学知識を利用して、医師に診断書の内容についてお願いをすることはお勧めできません。 「何がいいたいのかわからない」「この人は何もわかっていないな」「この人、被害者意識が強すぎるんじゃないかな?」などと思われてしまい、 逆効果になる恐れがあります。ご自身でお話しされる方は、くれぐれも慎重になさってください。

医師の診断を否定して書き直しを求めるというのは、余程の事情がない限りしてはいけないことです。 足りない情報を補足してもらうという姿勢が基本となります。

曖昧な態度では先生も困ってしまうでしょう。何をどう書いて欲しいのか、具体性を持たせることも必要です。例えば①他覚症状の欄に検査結果が書かれていないので書き足してもらうとか、 ②増悪緩解の見込み欄に何も書いていないので書いてもらう等のことです。もちろん「書いていないので、書いてください」では失敗します。 なぜ書いていないのか、医師の気持ち(考え)を推測した上でお願いするのがコツといえるでしょう。

医師への医療照会
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複数の科にかかっている場合

後遺障害等級は後遺障害診断書を中心とした様々な資料によって判断されることとなります。 同じ事故で、関節の機能障害、視力障害、高次脳機能障害等の障害が残った場合は、それぞれ診療科別に後遺障害診断書が書かれることとなります。 関節の機能障害は整形外科、視力障害は眼科、高次脳機能障害は脳神経外科などといった具合で、 それぞれ別個に症状固定日が決められ、等級認定も別々に行われます。申請手続きも一度にまとめて行う必要はなく、別々に行う事が可能です。

【2】申請先と必要な書類等

作成された後遺障害診断書は、事前認定の場合は任意保険会社から損害保険料率算出機構の調査事務所へ送付され、 調査事務所が認定基準に従い調査を行い、結果を任意保険会社に通知します。被害者請求をする場合には、 被害者が直接自賠責保険会社へ診断書等の申請書類を提出すると、自賠責保険会社から書類が調査事務所へ送られ、結果は自賠責経由で被害者に届きます。 事前認定とするか被害者請求とするかは、被害者が自由に選択できます。

後遺障害診断書は大切な書類ですので、郵送するときは簡易書留や宅配便などを利用しましょう。

※事前認定・・・任意保険会社経由で行われる申請です。

※被害者請求・・・被害者が自賠責保険経由で行う申請です。

※一括払い・・・被害者が自賠責保険に請求手続きをして、それで不足する分を任意保険会社に請求するのが本来の姿ですが、 それでは被害者の事務負担が大きいため、まず任意保険会社が一括して被害者に賠償し、 後で被害者に代わって自賠責保険に請求する「一括払い」が主流になっています。 一括払いをしてもらっている場合は、そのまま事前認定を行う事が多いですが、被害者請求をすることもできます。

事前認定のやり方

事前認定の書類提出先

事前認定の場合は、被害者のやることは、後遺障害診断書を医師に書いてもらって加害者側の任意保険会社に送るだけです。 診断書の用紙や返送用の封筒も、任意保険会社が用意してくれることが多いです。 細かい申請手続きは保険会社がやってくれますので、被害者としては簡単です。通常、印鑑も必要ありません。

中には後遺障害診断書が医師から直接任意保険会社に送られて、被害者の目に触れることがなく手続きが進められてしまうこともあります。 手間が省けて良いようにも見えますが、最低限、後遺障害診断書の内容くらいは把握しておいた方がよいでしょう。

事前認定による申請手続きには任意保険会社が関与するため、不利な扱いを受けてしまうケースも稀にあります。 不利な扱いを受けないにしても、被害者が関与しないことで、提出したほうがよい資料を提出しないままに気がつかずに手続きが進められてしまう ということもあり得ます。それが心配な方は被害者請求をした方がよいでしょう。

※事前認定のデメリット・・・後遺症が認定されても示談するまで保険金が支払われないため、働けなくなった被害者が兵糧攻めにあう事も。

被害者請求のやり方

被害者請求の書類提出先

被害者請求をする場合は、自賠責保険の請求書類を用意する必要があります。書式は加害者の自賠責保険会社に請求すれば、入手することができます。 提出が必要な書類はケースにより異なりますが、下記書類を提出することが多いです。提出先は住所地に近い自賠責保険会社のサービスセンター等ですが、 損保会社によっては、自賠責保険の請求は自賠責専門のサービスセンターなどで一括して取り扱いをしている場合もあります。

  1. 交通事故証明書
  2. 支払い請求書兼支払い指図書(実印を押します)
  3. 事故状況説明図
  4. 印鑑証明書
  5. 診断書と診療報酬明細書
  6. 後遺障害診断書

これらの書類を整えて、加害者の車が加入している自賠責保険会社に送付します。

※被害者請求のメリット・・・等級認定と同時に保険金が支払われる。手続きを自分でできるので、知識がある人にとっては状況を把握しやすく、確実性が高い。

※支払請求書には請求額の記載欄がありますが、金額は保険会社が計算しますので、記入する必要はありません。

※休業損害が発生している場合は、給与所得者の場合は休業損害証明書や源泉徴収票を提出します。 主婦の場合は住民票(同居の家族がいることの証明)を提出します。

【3】調査事務所

事前認定でも被害者請求でも、提出した書類は損害保険会社から損害保険料率算出機構の自賠責調査事務所に送付され、そこで審査されます。

障害等級は自賠責の別表(後遺障害別等級表)に定められていますので、 調査事務所では必要な調査をしたうえで、 この表のどの等級に当て嵌まるのかを検討することとなります。ケースによっては、ある程度積極的な調査も行われますが、それには限界があります。 必要なことを全て調べてもらえるわけではないので、 被害者側自らが認定に必要な情報を提出するように努力しなければならないケースが多いと心得ておきましょう。 醜状障害などで面接を求められる場合以外は、「直接会って後遺症の状態を見て欲しい」というやり方は認められていません。

後遺障害等級認定に必要な書類等

等級認定は、診断書、後遺障害診断書、画像フィルム、その他の資料から判断がなされます。 必要な検査が行われ、適切な診断が下され、且つ診断書の記載内容が適切であれば、自然と妥当な等級認定がなされるはずなのですが、 現実には様々な障壁により、被害者の後遺症に見合った等級認定がなされていないケースが溢れかえっています。

※画像フィルム・・・レントゲン、CT、MRIなどが代表的な画像です。最近はフィルムではなくCD化されている場合が多いです。

医師ごとの考え方の違い、私病患者と事故被害者の医師に対して求めるものの違いなども、障壁の一つです。 時間的な制約から必要な治療を受けることができないなどの、被害者の個人的な事情も障壁の一つといえるでしょう。 認定機関内では公平な判断が行われていたとしても、それ以外の被害者個人では解決の難しい様々な障壁から 不公平な結果を多く生み出さざるを得ないのが、現在の等級認定制度の欠点です。

なお、認定困難事案や異議申し立ては自賠責保険審査会、調査事務所で判断が困難な事案は地区本部、 高次脳機能障害や非器質性精神障害は専門部会で認定作業が行われます。

医療照会

調査の一環として、被害者の通院先の医師に対して医療照会が行われる場合があります。 調査事務所から照会のための同意書の提出を求められた場合は、協力したほうがよいでしょう。 ただし医師の回答が杜撰だと、認定にマイナスとなります。 医療照会の内容は認定結果に大きな影響を及ぼしますので、これに対する対応も大切です。

【4】結果の通知

認定結果は、申請した保険会社から郵送で通知されます。申請してから3ヶ月程度かかることが多いですが、 1ヶ月くらいの時もあれば半年くらい待つ時もあります。結果は該当する等級がない時は「非該当」、該当等級がひとつある時は「第何級何号」、 複数あるときは「併合何級」という形で知らされます。認定票には認定結果に不服がある時は異議申し立てができるという旨の記載がされています。 その他に、今回の認定理由を書いた別紙も送られてきます。

被害者請求をして等級認定された場合は、結果通知から数日内には自賠責保険金が支払われることが多いようです。

結果に不服がある時は、異議申し立てができます。

初回の申請で失敗しても、異議申し立てをして、後遺障害等級認定に再チャレンジすることができます。 異議申し立ての回数に制限はありませんが、ただ不満を述べるだけでは 認定結果は変わりませんので、診断書などの客観的な資料を追加で提出した方がよいでしょう。

異議申し立てには、何らかの新たな資料が必要となることが普通ですが、症状固定後では対策を立てるのには既に手遅れという事もあります。 事故後早い時期に情報収集をするように心がけましょう。

当事務所でよく取り扱っている異議申し立ての事例

これらの後遺症があり、認定結果に不満がある場合は、異議申し立てを検討してみることをお勧めいたします。

異議申し立てをする場合に、あらかじめ「異議申し立てをします」などの通知をする必要はありません。 異議申立書と必要な資料を提出することで異議申し立ては受理されます。ただし時効にはご注意ください。

認定に必要な条件は何か

どうすれば認定される?

後遺障害等級が認定されるためには、いくつかの条件を満たす必要があります。
第一に、治療効果がなくなったとき(症状固定日)に後遺症が残っている事が必要です。 つまり症状固定になってからでないと、後遺障害としては認定されません。症状固定日は傷病の程度や治療経過によって変わりますが、 一般には事故から6ヶ月以上経過した時点で決められています。「後遺症が残っていること」とは、単に障害が存在しているだけでなく、 その障害が将来においても回復の見込みのないものであることも必要です。

第二に、交通事故による怪我の結果として後遺症が残っていること(相当因果関係)が必要です。 例えば、事故にあってから2週間後に首が痛くなったが、忙しかったので病院に行ったのはその2週間後だったという場合は、 事故にあってから4週間も治療に行かなかったことになり、事故と症状の間に因果関係がみとめられないという理由で非該当となる可能性が高いです。

第三に、後遺症の存在が医学的に認められることが必要です。 例えば、肘が曲がらなくなったのであれば、関節が損傷しているとか、神経が麻痺しているなどの原因があるはずです。 捻挫後に痛みが残ったのであれば、軟部組織の損傷が認められたり、損傷が確認できない場合でも強い衝撃を受けたなどの原因があるはずです。 それらが上手く証明(説明)できなければ等級は認定されません。

  • ▼ 事例・判例
  • ■相当因果関係について
  • □中心性脊髄損傷等で22日入院後、喀血で死亡したのは事故との相当因果関係ありとした事例
  • □事故後1ヶ月余り通院後、約4ヶ月間通院しなかった場合につき、その後の通院治療は事故と相当因果関係がないとされた事例
  • □事故の約10日後に発症した外傷性頚部症候群と事故との因果関係を認めた事例
  • ■医学的証明について
  • □MRIによる椎間板ヘルニアが外傷性と認められた事例
  • □末梢神経障害がTinel様徴候により証明された事例

次の場合は認定される可能性が少ない。

  • 事故前から同部位に同程度の障害を持っていた
  • 傷害を負ったことについて医師の診断がない
  • 診断書上、後遺症がある事が認められない
  • 後遺症が残るような事故ではない
  • 治る見込みのある障害である

むち打ち症 ~認定されにくい後遺症を知っておく

手足の欠損や、MRIなどの画像検査ではっきりとわかる後遺症は、 見た目で障害の存在が明白なので、はじめから妥当な等級に認定されます。

認定が難しいのは、主に視覚的に捉えるのが難しい後遺障害です。神経痛で仕事ができない状態であっても、 証明ができなければ後遺障害として認められません。

  • ▼ 事例・判例
  • ■認定が難しい後遺症
  • □頚椎捻挫が初回認定で非該当。異議申し立てにより14級に認定された事例。
  • □中心性脊髄損傷が初回認定で非該当。異議申し立てにより12級に認定された事例。
  • □高次脳機能障害が初回認定で9級。異議申し立てにより5級に認定された事例。
  • □PTSDが初回申請で14級。異議申し立てにより12級に認定された事例。

認定されにくい後遺障害に対しては、症状固定前からの準備が重要となります。 ひとつ例をあげると「適正な治療を受けておくこと」があります。通院回数が少なすぎるのは問題ですが、多くすればいいというものでもありません。 その傷病と症状に合った治療を、適切な期間受けることが大切です。「そんなことは医師の指示とおりにしていればいいのでは?」と思われる かもしれませんが、通院指示は医師によりバラバラです。「毎日来るように」という人もいれば「来れるときに来ればいいですよ」というスタンスの人も多いため、 あてにならないことが多いのです。「医師の指示とおりに通院していた」ために非該当となる人もいるのです。 だからといって認定されなかったことを医師のせいにしてはいけません。医師から見ても「どうしてこの人が非該当になるのだろう?」というような 認定がしばしば行われているのが現実なのです。

認定に失敗する原因の例

  • 強い被害者意識
  • 医師との意思疎通ができない
  • 全て医師や保険会社のいう通りにする

嘘や心因性を廃除するため

肘が曲がらないことは見た目でわかるではないか、ともいえますが、中には保険金目当てでわざと 肘が曲がらないように偽装する不届きな輩もいるのです。そのためこういうケースでは、肘が曲がらないということを医学的に証明する必要があります。 多くの場合は画像検査などで肘が曲がらない原因がわかるものですから、医学的証明に苦労するということは少ないのですが、 中には本当に曲がらないのに、画像が正常なため、等級が認定されないというケースがあります。 そういう場合は、画像検査以外の方法で曲がらない原因を 証明できるのかできないのか検討しなければなりません。

正しい後遺障害認定

正直は大切。でもそれだけでは認定されない

きちんと治療していれば、きっと自分も妥当な等級付けがされると考えるのは、 いささか認識が甘いといわざるを得ないでしょう。いくつかの選択ミスが重なり、本来認定されるべきであるのに、 どうしても後遺障害等級が認定されずに苦労している方は大勢います。特にむち打ち症の場合は要注意です。 妥当な損害賠償を受けたければ、なるべく早い時期に後遺障害認定に関する正しい知識を勉強するか、後遺障害に詳しい行政書士のサポートを受けることをお勧めします。

等級認定のポイント ~ 成功する人の6つの法則

なぜ認定されにくいのか知っている

後遺障害等級の高低は損害賠償金額に直結するため、不正排除の要請から認定には厳格な基準が定められています。 そのため真に後遺症が残っている被害者であっても、一定の基準に達していない人は、簡単には認定されないという状況が生み出されているのです。 後遺症に見合う等級認定をより確実に受けるためには、基準を理解することが大切です。

法則1 適切な治療を受けている

治療内容や通院の頻度は医師の指示に従うのが基本ではありますが、傷病の内容によっては 極端に多いまたは少ない通院を指示されることがあります。医師の指示に従ったばかりに法則からはみ出してしまう、といったことのないようにしましょう。 等級認定される人のほとんどは、症状に合った適切な治療を受けています。

特にむち打ち症の場合は、整形外科に通院し一般に行われる治療を受けておかないと、適正な補償も受けられなくなる恐れがあります。 接骨院や整骨院、鍼灸院の治療が有効な場合もありますが、損害賠償請求という視点から考えると後に問題となる事もありますので、 通院が長引きそうな場合は注意が必要です。整骨院は病院に比べて遅くまで開いている事が多く、仕事をしている人にとっては通院しやすいのですが、 『仕事を早退しないと病院に通院できないから、整骨院中心に通院していた』という事情は後遺障害認定ではあまり考慮されないようです。

法則2 保険会社のいいなりにならない

一般的には、交通事故が起きると加害者側の任意保険会社担当者が、治療費や休業損害の支払い手続きなどをしてくれます。 丁寧に誠実に対応してくれる担当者がいる一方で、常識に欠ける対応をする担当者もいます。担当者は保険会社の立場で物事を考え、主張してきますが、 それが一般的に見て妥当な主張である場合もあれば、そうでない場合もあります。「担当者さんが親切だったので、そのとおりにしていたのに・・・」 とがっかりしている相談者は多いです。保険会社の人は被害者のためになることもいえば、ためにならないこともいいます。 例えばいつごろまで治療を続けるべきかについて、適切でない意見を押し付けてくる場合があります。 従うべきか従わないべきか、それを見極める知識が必要です。

法則3 医師任せにしない

後遺障害等級は医師が決めるわけではありません。「後遺障害診断書」一枚で決められるわけでもありません。 普通の医師は後遺障害の等級認定については深い知識がありませんので、被害者が診断書の内容に関心を持つことが必要です。 情報不足の診断書には修正をお願いしたほうがよいでしょう。

診断書に書いてあることや、自分の傷病を理解するには、ある程度の医学知識も必要です。しかしあまり頭でっかちになってはいけません。 インターネットなどで情報収集をしていると難しい専門用語もたくさん載っているため、それを憶えて医師に相談しようとする人がいますが、 素人がにわか仕込みの理屈をこねれば、医師を不快にさせ、相談の目的を果たせなくなる可能性もあります。 知識はあったほうがよいですが、その使い方を間違えないようにすることです。例えばむち打ち症の分類で、捻挫型、神経根症型、バレーリュー型、 脊髄症型の別を質問したり、大腿骨転子部骨折でEvansの分類について質問するなどのことは、本当に必要性がある場合でない限り避けるべきでしょう。

法則4 後遺障害について、正しい知識をつける

後遺障害等級の認定基準、申請手続き、関連する医学知識について、 正確な情報を得ることが妥当な等級認定を受ける上で大切なことです。 ネット上の間違った情報や、当てはまらないケースを誤って解釈することにより、自らを不利な状況に追い込むことのないようご注意ください。 最近の相談者の傾向として、ネット上で勉強されている方が勘違いをされている事が多いのです。例えば(X)という情報がその人に当てはまるかどうかは、 (A)(B)(C)という事実について検討することが必要なのに、(A)だけで自分にも当てはまると思いこむ人が多いのです。 それが原因で間違った方向に進んでしまわないよう、できれば早目に専門家にご相談を。

法則5 専門家に相談する

にわか仕込みの知識では対応に限界があります。次から次へとわからないことが出てきて前へ進めません。 自力解決に限界を感じたら、専門家に相談してみましょう。思いもよらなかった方法が、きっと見つかります。

当事務所では、等級認定のために、例えば次のような点について検討しています。 『性別、年齢、職業、事故日、治療開始日、受傷機転、車両損壊、意識障害、筋や骨の状態、神経、既往症、治療(投薬・物療)、通院先、 手術、装具、行動制限、MMT、反射、知覚、症状再現、画像検査と結果、電気生理学的検査、退行性変性など』

法則6 関係者の胸の内を知る

医師は被害者に力を貸したいと考える一方で、保険会社の医療照会への回答や治療費請求などで 不愉快な思いをしたり、被害者からも何度も診断書や検査を要求されたりして煩わしい思いをしており、できれば交通事故にはかかわりたくないという気持ちも持っています。 受傷機転や症状経過によっては、後遺症はないと考えている場合もあります。そうした胸の内を汲んだうえで対応を考えることが成功の秘訣です。